外から見た町の魅力を伝える錦まち観光協会職員

平本 真子さんMako Hiramoto

熊本市出身。グラフィックデザイナーとして仕事を始め、28歳の時に独立。2016年、錦町へ。3年間の地域おこし協力隊、1年間の町の臨時職員勤務を経て、観光協会の職員に。小学4年生と2年生の子どもと3人暮らし。

錦町に古くから残る航空基地
歴史を学べるミュージアムがオープン

「『山の中の海軍の町にしき ひみつ基地ミュージアム』にはぜひ足を運んでほしい」。錦町の人におすすめのスポットを尋ねると、多くの人から返ってくる回答の一つだ。
2018年、錦町にオープンした「ひみつ基地ミュージアム」は、太平洋戦争末期に作られた「人吉海軍航空基地」の歴史を学べる資料館。海軍基地は、長さ1500m、幅50mの滑走路を備えた飛行場で、約6000人もの予科練生たちがこの地でパイロットやエンジニアとして育成されていたという。ミュージアムには当時の基地の役割や活動を年表で解説したもののほか、隊員の遺品、零戦の残骸などが展示されている。周辺には当時、数多くの軍事施設が地下に掘り進められ、「魚雷調整場」「地下作戦室・無線室」などは、今もその姿を残している。

地域おこし協力隊として
熊本市内から錦町へ

生まれも育ちも熊本市という平本さん。2016年、離婚を機に2人の子どもを連れて引っ越すことになり、県内で仕事を探すことから始めたという。
「母親に余裕がないと育児はうまくいかないと考え、緑豊かな田舎で子育てをしながら働きたいと思っていた」と当時を振り返る。
錦町が地域おこし協力隊を募集していることを知人から教えてもらい「すぐに電話をして、3分後には協力隊に入ることが決まっていた」と平本さん。錦町では、「ひみつ基地ミュージアム」の活用を検討している時期で、立ち上げ当初からミュージアムに配属され、3年間の任期を経た後も引き続き働くことになり、副館長として事業企画や広報などの運営に携わっている。
「ミュージアムをより身近に感じてもらえるように、パンフレットのディレクションをしたり、チラシを制作したり。グラフィックデザイナーとしての経験を生かしながら、新しい知識をインプットでき、毎日が楽しい」

ガイドツアー通して伝えたい
人吉球磨の人々の魅力

職場で戦争の歴史を学ぶ中で、「命の尊さや平和の大切さを考える機会になり、子育てにも必要な視点だと改めて気づかされた。親が自国の戦争を知っているかいないかで子どもに投げかける言葉も違ってくると思う」と強調する平本さん。
資料館に「ひみつ基地ミュージアム」という名称を採用したのも、資料館のハードルを下げて、親子に来てもらいたいという思いからだった。
また最も力を入れているのが、地元の人々によるガイドツアーと人材育成だ。視察で他市町村の観光地を訪れた際、平本さんは「やっぱりガイドしてくれる地元の人材が肝」と確信したという。「人吉球磨の人懐っこい、“おひとよし”な人柄に触れると、また来たいと思ってくれるはず」と、錦まち観光協会認定ガイドを育成し、遺構を巡るツアーを行っているという。
「まったく歴史を知らない人が来ても、楽しんでもらえる自信がある。ぜひ半日かけて、地元のガイドとともに遺構を周ってほしい」

外から来たからこそ分かる良さ
錦町の魅力発信の力に

縁もゆかりもない錦町で働きながら、2人の子育て真っただ中の平本さん。「よく来たね」と驚かれることも多いそうだが、「日本語が通じれば問題なし」ときっぱり。錦町で通わせていた保育園は、運動場が広く、子どもたちがのびのび遊んでいる様子が印象的だったそう。「保育園の活動で河川敷を歩いたり、公園で思いっきり遊んだり。自然と触れ合う時間が多く、ここに来てよかったと思えた」
そんな平本さんが最も気に入っている風景が、錦町の夕焼けだ。「山や球磨川が真っ赤に染まる様子は美しく、見たことがない景色だった。毎回、心から感動する」と平本さん。外から来たからこそ分かる錦町の魅力の数々。その視点が今後も錦町をますます輝かせる力へとつながっていくことだろう。