世界に誇れる球磨焼酎を常楽酒造株式会社 製造部
酒造課 副杜氏 課長

吉田 和弘さんKazuhiro Yoshida

相良村出身。機械器具の製造販売、飲料工業勤務などを経て2011年に「常楽酒造株式会社」へ入社。工場の製造全般に関わる。2021年7月、副杜氏に就任。妻、4人の息子と6人暮らし。

夢だった焼酎づくり
日々ワクワクの連続

「やりたかった仕事だからこそ、日々、ワクワクした気持ちで仕事と向き合っている」と目を輝かせるのは、常楽酒造株式会社で副杜氏を務める吉田和弘さん。
米麹を作り、さらにそれを蒸した米に仕込んでから蒸留する、焼酎の製造全般に携わっている。「どれか一つの工程がよくできたとしても、全てがうまくいかないと良い焼酎ができない。気が抜けないが、やりがいのある仕事」。
吉田さんは、鼻、舌、耳とあらゆる感覚を駆使して細心の注意を払い、酵母や麹の使い分けにこだわる。特に、酵母やもろみの温度管理、熟成期間など、微妙な差で焼酎の味わいが変わることを理解し、その変化に対応するよう努めているという。

麹や酵母の研究を重ね
焼酎の差別化に成功

吉田さんが入社した当時、常楽酒造は「焼酎の香りが少ない」といった課題に直面していた。そこで吉田さんは酵母の種類やその特徴などを学び、麹と酵母の相性について何通りも組み合わせて研究を重ねていったという。
最終的には、白麹、黒麹、黄麹といった麹を使用し、銘柄に合った香りや風味をもたらすことに成功。

例えば本来、日本酒に使われる黄麹を用いた「常楽酒造 秋の露 純米」はバナナやメロンのような芳醇な香り、黒麹を用いた「秋の露 黒」はりんごのようなさわやかな味わいが楽しめる。
最近はワイン酵母を使った米焼酎も開発した。
「お客さんに飲みやすいですね、ではなく『おいしい』と言ってもらえるのが理想。そのためにも今後も商品ごとに味わいや香りの差別化を図っていきたい」と意欲を見せる。

錦町の特産を生かし
独自の商品を開発

錦町の魅力について、吉田さんは人吉球磨地域の中でも交通の便が良い点や、子育てがしやすい安全な環境である点を挙げる。
また、錦町は自然豊かな環境に恵まれ、その地域の特産品を生かした産業が盛ん。吉田さんもその一端を担っている。
錦町特産の甘くてジューシーな桃や梨などを使用した本格米焼酎ベースのリキュールは、常楽酒造の主力商品の一つ。ぜいたくにも旬の時季に収穫されたフルーツを生のまま焼酎に漬け込んでいるため、香り高く、フレッシュな味わいに仕上がるのが特徴。甘いフルーツジュースとは異なり、フルーツの香りと共に焼酎の味わいもしっかりと感じられる逸品だ。「錦町のフルーツはおいし過ぎる。それを使ったリキュールを開発できたのは、わが社の自慢」と胸を張る。

米焼酎の認知度高め
世界へ広めたい

今後の目標は、米焼酎をより広く世に知らしめること。米=日本酒という認識を持つ人が多く、焼酎といえば芋や麦を連想する人がまだまだ多いとか。
常楽酒造で製造する「球磨焼酎」は、人吉球磨の米を主原料とし、地元の地下水を仕込み水に用いて作られている。世界的な保護を示す地理的表示「GI球磨」を国際的に認められた本格焼酎ブランドの一つだ。地域ブランドの保護を示す地域団体商標登録も受けている。

現存する球磨焼酎の蔵元は27箇所。「球磨焼酎は世界に誇れるブランド。他の蔵元とも切磋琢磨して、もっと日本、ゆくゆくは世界に広めていきたい」。
最近はライスウイスキーを開発し、海外からの問い合わせも増えているという。地域や地元の蔵元と共に成長を目指す常楽酒造の今後が楽しみだ。