店主
桑原 県一さんKenichi Kuwahara
錦町出身。高校卒業後、航空自衛隊に所属。後に上京し、飲食業に携わり新宿でバーを開業する。2012年、錦町に帰郷し就農。14年、同町にファーマーズカフェ「SAKURI」オープン。父母と妻、3人の娘と7人暮らし。
生まれ故郷錦町で
ファーマーズカフェをオープン
夏にはホタルが舞う、自然豊かな田園風景の中にポツンとたたずむ錦町のカフェ『SAKURI』。
桑原県一さんがパートナーの美穂子さんと共に営むファーマーズカフェだ。元々牛小屋だった場所をリフォームして作った温かみのある店内では、桑原さんらが作った新鮮な野菜を使ったピザやパスタを提供している。
生まれも育ちも錦町の桑原さん。高校卒業後は、故郷を離れて就職し、東京で飲食業のキャリアを築いていた。その過程で「将来的には自分の店を持ちたい」という夢を抱き、念願のバーを新宿に開業。8年間経営する中で美穂子さんとの出会いがあり、第一子の出産を機に、錦町に戻ることを決意したという。
2012年に錦町に帰郷し、新規就農者として農業をスタート。現在は、農業とカフェの経営を両立させながら、家族と共に錦町で生活している。
ピザ作りを通して
錦町の特産品PRに貢献
早朝に野菜を収穫し、その後はピザ窯の火入れから仕込み、生産物の袋詰め。店のオープン前に野菜を卸すために配達し、戻ったらカフェをオープン。クローズ後も農作業や薪割り、翌日の仕込みと走りっぱなしの一日。「東京での生活と比べるとハードな日々。しかし体を動かすことが基本的に好きなので、毎日が楽しい」と満面の笑みを浮かべる桑原さん。農業とカフェの両立を続けられているのは「妻の存在が大きい。自分一人では到底できない」と言う。
カフェでは桑原さんが、ピザをはじめ、料理を、美穂子さんがスイーツ作りを担当している。
「自分たちが栽培した野菜や地元の食材を使った料理を提供することで、お客さんに喜んでもらえることが何よりもの喜び」と話す桑原さん。
最近は、錦町の特産品である桃を使ったピザメニューも開発し、旬の時季に提供したところ好評だった。ピザ作りを通して、地元産品の価値を高めることにもやりがいを感じているそう。
子どもの頃の思い出が詰まった
自然豊かな錦町
一度は故郷を離れて東京で暮らしていた桑原さんが、錦町に戻ってきたのは、「子どもの頃の思い出が色濃く残っていたから」。
平成の名水百選(環境省選定)の一つ、大平渓谷の川で泳いで魚釣り。他にも田んぼでサッカーをしたり、秘密基地を作ったり。「子どもが生まれたら、そんな自然豊かな錦町で育てたいという思いが強かった」と桑原さんは振り返る。
とはいえ、スマートフォンが普及し、手軽に動画などを見られる時代。桑原さんが思い描いていた通りの自然と触れ合う日々とはかけ離れることも。しかし、なるべく休日は家族そろって自転車で出掛けたり、川に遊びにいったりする時間を大切にしているとか。
「妻も錦町の星がきれいと感動している。おいしい空気や水に恵まれていることが、心の充実につながっている」
郷土愛たっぷりの料理
町の自然と合わせて楽しんで
お店をオープンして約10年(2024年3月取材時)。長い歳月をかけ、客足も着実に伸びているという。
「菜の花やタケノコ、クリ…と、季節によって異なる収穫物のおいしさをぜひ味わいにきてほしい」と話す桑原さん。合わせて、「春はツクシイバラ、夏は川遊び、秋は紅葉鑑賞といった春夏秋冬表情を変える錦町の自然もぜひ楽しんでほしい」と続ける。
郷土愛たっぷりの桑原さんが作る料理からは、錦町の豊かな自然風景が浮かんでくるようだ。
「今後も妻と相談しながら、足並みをそろえて錦町での生活を歩んでいきたい」と目標を話してくれた。