
ウエディングプランナー
宮田 亜矢さんAya Miyata
錦町出身。大阪の短期大学を卒業後、大阪の企業を経て、阿蘇くまもと空港のグランドスタッフとして約10年間勤務。2012年に錦町へ戻り、『パルティール福寿庵』のウエディングプランナーとして活躍中。夫と息子の3人暮らし。
「人を喜ばせる仕事がしたい」
その思いが導いた道
「ウエディングプランナーの仕事がしたかった」。
宮田亜矢さんはそう語る。
幼い頃は空港のグランドスタッフに憧れを抱き、その夢を叶える形で熊本の空港でグランドスタッフとして働き始めた。
職場は女性が多く、スタッフ同士のつながりも深かった。そんな環境の中で、同僚の結婚などの節目のイベントの際にサプライズを仕掛ける機会が次第に増えてきたという。
「寄せ書きを集めたり、写真や動画を編集してDVDを作ったり。みんなが驚いて喜んでくれるのがすごくうれしくて」。
人を喜ばせることにやりがいを感じるようになった頃、友人の結婚式に参列する機会も増えた。
「結婚式って、こんなにも感動するものなんだと改めて実感した。新郎新婦だけでなく、家族や友人、参列した人みんなが幸せな気持ちになれる場。そんな特別な瞬間を作る仕事ができたら素敵だなと思うようになった」。
新たな道を模索していた頃、母に相談すると「ちょうど実家の式場で欠員が出た」とのこと。偶然が重なり、錦町へ戻ることを決意。「家業を継ぐためではなく、プランナーとしての仕事がしたくて帰ってきた」と振り返る。
結婚式を通じて紡ぐ
「家族愛」
『パルティール福寿庵』は1981年創業の式場。もともとは宮田さんの両親が『レストラン福堂』として開業し、その後、結婚式場へと業態を変えた。
「福寿庵のコンセプトは“家族愛”」。
結婚式は、夫婦の新たなスタートの場であると同時に、家族の絆を深める場でもある。宮田さんの父であり、福寿庵の社長は、長年司会を務めながら「2人が出会えたのは、お父さんお母さん、そしてその祖父母、ご先祖さまがいてくれたから」と語り続けてきた。
「私たちもその思いを大切に、新郎新婦やご家族と向き合っている」と笑顔を見せる。
初めての打ち合わせから披露宴まで、半年以上かけて準備を進めることが多く、新郎新婦との距離も自然と縮まる。
「前日には結婚式の夢を見るくらい緊張する。でも、式が終わって『宮田さんがいてくれて安心できた』と言ってもらえると、本当にやりがいを感じる」。
式場のカフェを通じて
新しい出会いを創出
『福寿庵』では、宴会や法事、仕出し、お弁当など幅広いサービスを提供しているが、より多くの人に気軽に訪れてほしいと、2024年11月に『花カフェ momoca』をオープンした。
「もともと大人数の宴会や団体利用のイメージが強く、個人のお客さまにはハードルが高いと感じられていた。そこで、もっと気軽に立ち寄れる場を作ろうと考えた」。
カフェの名前『momoca』は、錦町の特産品「桃」と、人吉球磨地域の方言で「かわいい」を意味する「もぞか」を掛け合わせたもの。エディブルフラワー(料理や飲み物に添える、食べられる花)を使った料理や、熊本県内ではここでしか味わえない(2025年3月時点)東京青山のF&Pのスムージーなど、こだわりのメニューを提供している。
「オープン当初は予想以上に好調で、お客さまが店内の花や照明を見て『わぁ、素敵!』と歓声を上げてくれるのがうれしかった。カフェをきっかけに『ここで宴会もできるんですね』『子どものお祝いもお願いしたい』という声も増えてきた」
実際にカフェスペースで披露宴を行ったカップルも誕生しているという。
錦町の温かさを
未来へつないでいきたい
「錦町は子育て支援が手厚く、治安も良い。知らない人とも自然にあいさつを交わす温かい町」と話す宮田さん。
また、「錦町にはもっと若い人たちが戻ってきてくれたらいいな」と続ける。
「高校を卒業すると半分以上が町を離れてしまうけど、地元で働く魅力や楽しさもあることを伝えたい。私自身、一度は町を出たが、結果的に錦町に戻ってきたし、この町には人の温かさがある。それを感じてもらえたら」。
そんな思いを込めて、宮田さんは今日も結婚式の準備に励む。
「まずは、カフェに気軽に足を運んでもらえたら。コーヒー一杯からでも大歓迎。Wi-Fiもあるので、お仕事ついでにぜひ寄ってください」と宮田さんは優しく微笑んだ。